ああ、おれはもうこの光についていこう

《ああ、もうだめだ。なにがだめなんだ。ああ、このこと、ここにいることでこの砂の匂いや音がもうすべてが襲いかかってくる。そのなかに光が見える。ああ、おれはもうこの光についていこう。その先になにがあろうと。その先がどんなにおそろしくても、このだめな感じのなかにひとりでうずくまっているよりましだ。おまえはたれだ。おれはなにものでもない、ただ闇雲にあるものだ。闇雲のなかの闇雲だ。うああ、光を見失うな。光についていけ。ああ、よろこびがうまれた。ああ、光が感じられることのよろこびが、ああ、おれがあった。なにを言っているんだ。うるさいっ。光が見えなくなる。おれはもう金輪際、光しか見ないぞ。光しか聞かないぞ。光についてなにも言わないぞ。おいっ、黙るな。おいっ、黙るな。なにもわからないじゃないか。なにもわからんよ。そうだね。

 と語らった。》

「ホサナ」町田康 p272

 

・吠えるで思い出した「ホサナ」。主人公が犬の言葉がわかるようになってそれを直訳で書いているシーン。

・デヴィッド・ロバート・ミッチェル「アンダー・ザ・シルバーレイク」で主人公がトイレで女の子たちに囲まれてワンワン吠えられているホラーシーンがある。吠える瞬間はかわいい顔がちゃんと犬の顔になっている。

【公式】アンダー・ザ・シルバーレイク 10・13公開/本予告

https://www.youtube.com/watch?v=k_HTIwGcKhg