思想ではなく手段としてのBライフ

岡田利規の演劇で、精神が穏やかでなかった頃に、これさえあればいいと思っていた一冊として話されていたソローの「森の生活」。森で自給自足するソローが畑をたがやすことに喜びを感じている、その謳歌ぶりはいま思えば無理に謳歌している文章が気になる、というくだりがあった。終盤になって、しかしあのころ精神を支えてくれた本に対してシニカルになるのはやめよう、という方向へ話が進んでいくのが好きだった。文芸誌に発表された脚本しか読んでいない。ソローも読んでいない。

 

ミニマリストとかシンプルライフとか生活に対する哲学が先立ってあるのが、いまいち合わない感じがしてそれよりもダルさがベースにあるphaとかにシンパシーを持っていた。ずっと読んでみたいと思っていた高村友也の本がKindleにあったので買った。Bライフ。思想というより手段。読み始めてすぐこれだと思った。

 

<Bライフとは、安い土地でも買って適当に小屋でも建てて住んじゃおうという、言ってしまえばそれだけのライフスタイルだ。>

 

<100万円足らずの初期費用によって、月2万円程度で維持できるお気楽生活への道がちゃんと開かれていることを示したい。>

 

<Bライフは、筋金入りのサバイバルでもなければ、自給自足やDIYにこだわるものでもないし、スローライフやエコロジーライフ、ナチュラルライフなどというものとも違う。「金がなくとも心は……」といった根拠のない貧乏賛歌でもないし、「働かない」とか「もうリタイヤ」と決め込むわけでもない、働きたくなったら働けばいいし、「そこ」に帰ってくれば最低限の生活が保証されている、でも最低限だから維持費なんて全然かからない、そんな自分だけの安全地帯を、低予算で、しかし完全に独力で構築する。金もない、技術もない、知識もない、協力者もいない、そんな人でも、素人業の積み重ねでなんとなくそれらしいものを作って、なんだかんだで生活していく。>

 

『自作の小屋で暮らそう ――Bライフの楽しみ』高村友也