授乳室に誰もいなくて救われた

 

夕方の六時前に出はじめた月は赤くて大きいので沈みかけの夕日かどっちかが一瞬分からなかった。東と西を考えていなかった。両親がドイツに旅行に行っているので猫の餌をやりに実家に来た。猫を屋上に出そうと確認したら満月だった。

 

中学のころにあざみ野でみた月はその十倍以上あった。サッカー部で外ランの準備体操をしていた。丘の上で住宅外の屋根の上にでかい月があって、一緒にゆっくり走ろうと馴れ合っていたチームメイトとあまりにでかいので笑いあった。いつもそうやって本気で走ってはいなかったからその日も多分そんな感じで馴れ合っていたと思う。

 

横須賀美術館にいったときに、トイレに入ろうと思って男女に別れる前の通路の一番手前のドアをなんとなく開いたら授乳室だった。誰も入っていなくて救われた。小便がしたかったのだから個室のトイレを探していたわけでもなかった、本当にぼーっとしていてなんとなく開いた。薄暗い部屋のなかに丸椅子がいくつか置いてあった。